- 概要
2026年1月5日、カンボジア王国政府は、「集中居住区域における治安および安全管理に関する政令第03号」(以下「政令第03号」という。)を公布した。政令第03号は、集中居住区域内における治安および安全管理措置の執行について当局の責任を明確化するとともに、各施設の責任者、所有者、管理者および居住者に対し、法執行機関を支援する積極的な協力者としての義務を課すことにより、社会の安全、治安および公共秩序の強化を目的とするものである。
- 適用範囲
政令第03号は、全国のすべての「集中居住区域」に適用される。集中居住区域とは、公的又は私的な機関若しくは企業の集合的居住地又は恒久的居住地を指し、具体的には、 ゲーテッド・コミュニティ、コンドミニアム、アパート、リゾート、バンガロー、区分所有建物、工場、企業、農場、特別経済区(SEZs)、経済的土地付与区域(ELCs)、ゲストハウス、 ホテル、寮、寺院、宗教施設および孤児院等を含む。王立カンボジア軍(RCAF)および国家警察の集合住宅区域は、適用対象外とする。
- 主な遵守義務
政令第03号に基づき、集中居住区域の管理、運営および使用に関与する関係者には、以下のとおり「治安および安全管理措置への参加義務」が課される。
(1) 居住者データ管理義務 :集中居住区域の責任者、所有者または管理者は、以下を行わなければならない。
- すべての居住者について、書面または電子形式による登録簿を作成し、これを維持管理すること。
- 居住資格に関する変更が生じた場合、これをコミューン/サンカット行政警察署に報告すること。
- 一時的に滞在する外国人の存在について、24時間以内にコミューン/サンカット 行政警察署またはその他の管轄当局に報告すること。
(2) 身分確認義務 : 集中居住区域の所有者または管理者は、外国人が当該施設に滞在することを許可する前に、その合法的な居住資格を証明する有効な書類を取得しなければならない。不法にカンボジアへ入国した外国人の滞在を許可することは、厳格に禁止される。
(3) 管轄当局への協力義務:所有者、管理者または責任者は、以下の方法により管轄当局に協力しなければならない。
- 集中居住区域に対する現地査察を含む行政検査の実施を円滑に行うこと。
- 要請に応じて、居住者名簿および治安・安全システムの配置図を提出すること。
- 不審者または違法行為について、速やかに管轄当局へ通報すること。
(4) 滞在登録義務:内務省により認定され、永住カードを保有する外国人またはその代理人は、到着後48時間以内に、関係法令に従って居住登録を行わなければならない。その他の 集中居住区域に滞在するすべての外国人についても、関係法令に基づき居住登録を行う義務を負う。
(5) 治安および安全システムの維持・改善義務:集中居住区域の所有者または管理者は、 防犯カメラ、防火設備、照明、エレベーター、出入口経路等を含む治安および安全 システムについて、適用される技術基準に従い、その品質および正常な機能を維持しなければならない。また、当該システムの改良又は強化に関する管轄当局の指示に従わなければならない。
(6) データ保存および保管義務:集中居住区域に設置されたすべての防犯カメラ映像は、 最低90日間保存しなければならず、出入記録簿等の物理的記録は、少なくとも1年間 保管しなければならない。
(7) 民間警備会社の義務:民間警備会社は、担当する集中居住区域を監視し、管轄当局と 協力し、区域内で発生した違法行為について速やかに報告しなければならない。
- 管轄当局
内務省(MOI)は、首都/州およびカーン/地区行政機関への権限委任を通じて、政令第03号の実施を統括する責任を負う。首都/州警察本部および市/地区/カーン警察署は、 コミューン/サンカット行政警察署による政令第03号の執行を監督するにあたり、首都/州 およびカーン/地区行政機関を補佐する機関として位置付けられる。
- 執行および罰則
政令第03号に基づく義務に違反した場合、以下の制裁が科される可能性がある。
- 治安および安全システムの維持管理を怠った集中居住区域の所有者または管理者は、発生した損害賠償責任に加え、40万リエル(約100米ドル)の罰金に処されることがある。
- 不法滞在の外国人を故意に匿い、又はこれを許容した所有者または管理者は、適用法令に基づく刑事責任に加えて、外国人1人につき400万リエル(約1,000米ドル)の罰金に処されることがある。
- 不法入国した外国人の隠匿を援助した公務員は、適用法令に基づく刑事責任に加えて、その職務から解任される。
- 結論および主な影響
政令第03号は、カンボジアの規制環境における重要な転換点を示すものであり、複数居住者を有する不動産の開発者、管理者およびその他の関係者に対する法令遵守義務を拡大するものである。居住者データの管理者、外国人の合法的居住資格の第一次確認者、ならびに法執行機関を支援する積極的な協力者としての役割を明確にすることにより、政令第03号は公共秩序の維持において不動産管理が果たす重要な役割を強調している。関係者は、これら新たな法定義務を完全に履行するため、速やかに社内規則および手続を見直し、必要な更新を行う ことが推奨される。
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